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みどりの東北元気キャンプ2012について(12)未知なる課題に取り組むための工夫(2)失敗をさせないための「選択」

 

最大の留意点は活動からリタイヤさせないこと

F3レーサーの井原さんの記事で、恐さを越えていくために必要なこととして、次のように述べました。

「基本は、恐く感じた辛かった体験を思い出しながら、その恐さを味わいます。しかし、実際には、その恐さは、今、目の前にはないものですので、今を意識しながら、その恐さの変化を感じとります。いずれ、その恐さは減少していきます。そして、この恐さが抜けた時に感じる安心感は、実は生物としては無上の喜びになります。これが、恐さを克服するために必要なことで、心理療法に共通するメカニズムになります。」

以下に示すように、キャンプでの課題は、災害時の辛かった記憶にリンクするのです。

このときに、最大限の注意を払わなければならないことがあります。恐さが減少していく前に、その活動からリタイヤしないようにすることなのです。

 

◆通常は思い出すことで症状が悪化する◆

覚えているでしょうか、井原さんはこう述べていました。

「クラッシュの恐怖は、早めに車に乗り、事故と同じような状況を無事に走ることでしか取れない」

怪我を押してまで、「早く車に乗る必要がある」と言うのです。時間が経過すればするほど、その恐怖が強まっていってしまうからなのです。なぜか。

繰り返し、恐かった瞬間、不快だった瞬間を思い出します。辛かった記憶を思い出すことで、記憶に恐怖や不快感が強く刻み込まれます。通常、記憶で思い出すのは、辛かった瞬間までです。最大の恐怖を感じた場面でため息をつき、そこで記憶の映像にストップをかけてしまいます。この瞬間、恐い過去の記憶の場面から逃げ出してしまうことが起きます。不快感に圧倒されてしまうのです。最大の不快感が高まった段階で、その場面から逃げ出すと、その恐さは、最大限の恐さとなって記憶に刻まれてしまうのです。

たとえば、カウンセリングなどでは、安心ができ、信頼ができる相手に、この状況を語ります。語れば良いというものではありません。それを語るときに、今、その瞬間に感じている不快感について、上手なカウンセラーは、感情面や身体的な変化などに焦点づけていきます。語り始めたときと、今語っている瞬間と、過去になったその大変な状況が起きた瞬間に感じた不快感とを、わけながら聞いていきます。

中心にどっしりとした感覚を堅持しながら、相手の感覚に同調させつつ寄り添っていきます。そして、それを語りきったときに、「語って良かった」と思えるような感覚が持てるように会話を行っていきます。「語って良かった」と思える感覚は、不快感を細かく焦点づけられた中で、不快感を感じる場面にずっと向かい合っているからこそ、起きてきます。

なぜなら、脳は一定の感情をいつまでも保っていることができません。しっかりと感じ切ると、その感情は自然に下がっていくようにできているのです。しかも、安心した状況の中で、安心できる相手にそれを語っているときに起きる感情は、安心です。安心しながら、恐怖や不安を同じレベルで感じることはできないのです。ですので、不快感に圧倒されないで、その不快な体験場面に留まることができるのです。一人で思い出しているのとはまったく逆の結果になるのです。

写真は、メインの活動から逃れた子どもに寄り添う心理スタッフの様子です。怒りながら、そこら中を叩きまわっていた子どもをチャンバラの遊びに引き込んで、怒りに向き合い、寄り添います。

 

◆「選択」が目指す自己コントロール感の向上とリタイヤの予防◆

 

「みどりの東北元気キャンプ」では、あらゆる活動場面で「選択」できる機会を用意します。前回紹介した「達人証明書」も、達人になる時間を設けていますので、子どもたち全員が全ての「達人」になれるわけではありません。自分で、どの達人になるのかを選択します。

3日目は、チャレンジの日ですが、チャレンジの直前には、各活動に許される人数分チケットを配ります。ツリークライミングでは、30メートル上空を目指します。カヌーは、転覆した状態を自力で復帰できることを目指します。大人にとってもハードな課題に挑戦していきます。

このようにして、自分で明確に選択する機会を与えるのです。人気が殺到している場合には、子ども同士でチケット交換をさせて、最終決定してもらいます。ちなみに、このダフ屋さんにしか見えないのが、大熊副実行委員長です。公立学校の元副校長とは思えません。(^○^)V

災害は、自己コントロール感を喪失させる体験です。そこがレースとは異なります。同じ状況に持っていくことはできません。自らの活動を選択させることは、自分で状況をコントロールできる体験に他なりません。このチャレンジでの選択に限らず、あらゆる場面で「選択」を大事にすることとにしたのは、災害の心のケアだからなのです

そして、このもう一つの意義は、不快感ゆえに活動から離脱することを、極力避けるということもあります。不快感ゆえに状況から離脱してはならないのではありません。でも、上手に離脱させないといけないのです。そこから逃げ出すように離脱すると、不快感がさら に悪化してしまうのです。それは、先に述べた脳のメカニズムによるのです。選択を重ねることで、離脱の危険性が自ずと減っていきます。

しかし、子どもたちの選択を見ていると、実に興味深いのです。ツリーハウス作りには、なぜか、故郷に戻れないかも知れないと思っている子どもが集まります。学校で不適応を示している子どもは、カヌーで一流になることに挑戦する子どもが多かったように思えます。

自分が抱えている課題を克服することを、子どもたちは進んで選択しているようでした。

その姿は、傷を負っても恐怖を乗り越えることを目指したF3レーサーの井原慶子さんと同じように思えました。