世界一 心が温まるキャンプを福島県でやりたいと思う

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心理が30分で行ったこと(2)・・・バタフライハグ

初日の夜の心理の持ち時間の30分。後半は、全員参加のとけ合い技法(動作法)でした。子どもも簡単にマスターし、大人の背中に手を当て、「ピタ―・・・フワ―・・・」をしています。まったりとした穏やかな時間が過ぎて行きました。多くのお子さんや支援者には短いけれども、居心地の良い時間になったと思います。

わずか15分と短い時間にしたのは、この時刻にこれを行うと、眠く成り過ぎて、その日の振り返りを行うグループ活動の妨げになります。そこで、早々に切り上げたのです。それでも、しっかりと眠らされてしまったお子さんもいました。

しかし、ごく一部ですが、穏やかな時間とは感じていないお子さんもいたのです。それは、別の機会に触れます。そのようなお子さんが心理の専門家の対象になります。

ところで、その直前の時間は、「バタフライハグ」という方法を用いました。EMDRと呼ばれるPTSD治療専用の技法の中で用いられる手法のひとつです。この方法は、コソボ紛争のときに、戦禍を逃れて難民キャンプに逃げ込んだお子さんたちに、集団でトラウマ治療を行うために開発された方法なのです。

この技法を行うためには、EMDRを行える資格が必要です。この技法を行う資格のある臨床心理士さんは、わが国で数千人しかいません。 それを普段使いこなしている方は、千人にも満ちません。しっかりとした数日間の研修を、2回にわたって受けなければならないのです。東北はとくに少なく、 福島県で言えば、数名だと思います。今回、キャンプに参加した心理の専門家スタッフの中で、この資格のある者は、各回のキャンプどもに、7~8名いました。

手法はとても簡単なのですが、思わぬ副作用が出ることがあります。ですから、臨床心理士か精神科医師の基礎資格の上に、2回にわたる研修が必要になってきます。

これを導入するかしないかは、お子さんたちの心理的な健康さによって判断をします。深刻なPTSDの症状を抱えるお子さんがいた場合、この方法は、行わないつもりでしました。EMDRは、本来集団で行うものではないからです。お子さんたちの様子を、この時間までにじっくり眺めて判断しました。

このような技法を行うために、心理の専門家スタッフは、会場のあちこちに散りながら、お子さんたちに妙な症状が起きることがないのかについて、細心の注意を払ってもらっていました。

ここでは、「安心の風景」のイメージを持つこと、そして、心配なときに、自分に勇気を与えてくれる誰かから、声の応援メッセージをもらえるイメージを持つ「私のヒーロー・ヒロイン」の2つのことを行いました。EMDRの中では、一番安全な方法です。

それでも、筆者の言い回しの中で、お子さんのトラウマ記憶を引き出すような言葉が入らないように、事前に台詞を書きだしました。全ての台詞(プロトコルと呼びます)は、心理の仲間の専門家スタッフに事前に目を通してもらいました。

たとえば、「安心の風景」という言い回しは、本来は「安心の場所」と言います。安心の場所と言う場合、多くは故郷の我が家を思い出します。でも、この中には、故郷にすぐに帰れるとは限らないお子さんがいるのです。そこで、ここでは、「山や川などの風景や景色」という言い方にしています。地震や津波とはそれほど関連しない風景や景色ですし、「海」という言い方もしないようにしました。そして、この台詞を言い損なっているところがあれば、その場で補ってもらう約束で行ったのです。

心理の技法は、効果的であるものほど、心に影響を及ぼします。お薬も良く効くものほど、副作用があるのと同じです。また、心が回復していくときには、その途中で、強い感情が飛び出してきたりするものです。先ほど、副作用と述べましたが、個人の心理療法の場面の環境なら、不快な感情が爆発的に飛び出すようなことは、多くの場合、回復に繋がる大事な反応であることが多いのです。

でも、大勢でこれを行う場合では、本人にコントロールできないような不快な感情の爆発は、お子さん自身を不安にしますし、周囲のお子さんたちにも不安を与えます。それを避けたかったのですね。

安心感と勇気を自分で高めることが出来る方法の話は、しかし、多くのお子さんには新鮮なようでした。

食い入るようにこちらを眺め、真剣に習得したいとの気持ちが伝わってきました。しっとりとした時間が流れて行きました。