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心理が30分で行ったこと(3)・・・プログラムの流れについて

心理のプログラムの直前の30分間は、「都市緑化」の講演会でした。初日のアイスブレーキングプログラムの後で、全員が集まってのプログラムです。このプログラムは、全体を通して串刺しで、最終日の「未来の夢の町」を全員で作成していくことに繋がっていきます。

でも、この企画は、地震や津波で恐い思いをしたお子さんや、故郷に戻れないお子さん、そして、放射線によって自宅の周りが大変なことになっているお子さんにとっては、うっかりすると、辛いことを思い出しかねないことなのです。

 

写真は、松本守さん(フジテレビジョン)による「都市緑化」に関する講演会です。

松本さんのお話は、さまざまな立場の人が暮らす場、とても立場の弱い人たちがいても、その人たちを包んで行く環境に思いをはせるお話でした。

また、4日間、最終日の作成に向けて、柳瀬さんが独特のパーフォーマンスで、明るく未来の理想の町を考えて行こうと呼びかけました。

講演内容そのものがどれほど素晴らしくても、どれほど、魅力的に語っても、配慮を十分に尽くしても、未来の町を考えることは、都市に絶望し、家から追い立てられたお子さんたちには、辛く、苦しい作業になるのです。

なぜなら、未来を考えることは、過去の自分を慈しんでくれた故郷を思い出すことに繋がっていきます。そして、今、このようにあることを考えます。その落差が、長い時間の経緯の中で意識化されるのであれば、普通は、ほのぼのとした温かい感覚に包まれます。

しかし、大震災の後、急激に変化してしまった故郷の記憶は、そのときに感じたさまざまな恐さ、辛さ、苦しさを思い出すことを避けて通ることができません。

課題に向き合うには、その課題を思い出さねばなりません。ですので、初日のこの段階で、自分が今このような場でいることの課題、その課題の持つ大変さを意識化させる必要があるのです。PTSDの治療では、それを避けて通ることができないのです。ただし、十分な準備ができていない初日の段階では、必要以上に辛い記憶を不用意に思い出させてはいけません。ここが難しいのです。

辛いことを思い出させる「都市緑化の話」「未来の町の制作の話」の後で、その記憶にアプローチをするのが、心理の30分の企画だったのです。

都市緑化のお話で、子どもたちは、どうなったかと言えば、お話が終わりになったときに、一挙に騒がしくなりました。

この時点で、

「ボランティア支援者の方は、後ろに下がって、テントから出てくださーい」とのインストラクションが担当者から流れたのです。

ここから当方が受けもつつもりでしたので、

「これはまずい」と思いました。

前の方にいたお子さんたち、数名が一挙にに立ちあがって、テントの中から出て行こうと歩きだしてしまいました。リーダーたちが、「まだだよー。席に戻ってー」と、高い声で呼びかけました。この声は、高く投げだす感じなので、子どもたちの緊張を高めてしまいました。会場は、ますます混乱した様子になりました。

 

なるほど・・・と思いました。

お子さんたちは、想像通り、「未来の夢の町」などの話に、不安や恐さをどこかで感じていたのです。この話は、実はテントから逃げ出したいほど、しんどかったのです。これは話の内容が面白くないわけでもなく、話し方が悪かったのでもありません。インストラクションのタイミングや、集団に声をかける声の調子が悪かったこともありますが、それだけで、多くのお子さんたちが、テントから出て良いのだと勘違いするほど、辛く感じる話だったことが明確に表れた瞬間でした。

「じゃ、僕がやります」ということで、ここで、大熊先生(くまG;写真中央)に任せました。1指示、1動作、1確認という明確な指示出しをし、一息に静かにさせます。そして、バタフライハグの導入である「グラウディング」の方法を始めました。

「皆さん、その場で立って下さい・・・いいですねー」

「目を閉じてください・・・閉じてください・・・聞こえますか?・・・雨がさっきから降り始めています」

「雨の音・・・他に何が聞こえますか?・・・黙って、いろいろな音を聞きましょう」

このようにして静かにさせた後で、グラウンディングを始めます。

大熊先生にグラウディングをお願いしたのは、この手法を大熊先生に話したところ、「これは剣道(北辰一刀流)の準備動作にあるし、剣道の方がずっと良い」ということで、この部分をお願いしていたのです。

グラウディングで、自分の重心をしっかりと真ん中に落としたところで、予定通り、早川先生(けんごんちゃん;写真右)に引き継ぎます。そこでは、呼吸法をお願いしました。元教員で、学級崩壊建て直し先生だっただけに、お子さん向けのインストラクションはお手の物です。最近では、300名の中学3年生を相手に、大アリーナで心理教育を2時間したツワモノです。

「ストローでしゃぼんだまを作るみたいに、ゆーっくりと、ひゅーっと吐きまーす」は、多分、早川先生オリジナルのインストラクションです。

落ち着いた口調で、「呼吸法」を教えました。ここまで、5分間です。(後日、野外の専門家スタッフとして参加されていた日本福祉大学の小林培男教授が早川先生に次のように声をかけていました。「テントに戻って呼吸法を行って、生理指標で自分の不安や緊張の変化を測ったら、一気に数値が下がったんですよー。凄いですねー。ちゃんとデータ取ったら良いと思いますよ」ー閑話休題)
そして、バタフライハグ、動作法と流れて行きます。バタフライハグの準備として、もともと、このグラウディングも呼吸法もあります。ですが、それぞれの技を伝える上では、一流の布陣で、都市緑化の話で生じた不安や緊張を解きながら、しかし、そこで思い出した不快に感じる記憶が消え去らないうちに、その記憶を鮮明にさせるバタフライハグを与えたのです。これがトラウマ治療の基礎・基本なのです。そに上で、後味を良くする意味も込めて、最後にとけ合い技法(動作法)で完全にリラックスさせ、仲間に支えてもらえる体験を味あわせたわけです。

このように、この心理のプログラムは、わずか30分ですが、その前の都市緑化の講演でおきた不安や緊張を最大限に利用して、効果的にお子さんに働きかけるのかを想定していました。講演で不安や緊張が起きて来ることを、全て織り込んで作られていたのです。