世界一 心が温まるキャンプを福島県でやりたいと思う

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本日の夕刊フジに本キャンプの記事が掲載されました。

8月の最後の日。夕刊フジに「みどりの東北元気キャンプ」の記事が掲載されました。

記者さんが現地に出向いていただき、丁寧なインタビューをしていただきました。

記者さんの誠実な取材、本当にありがとうございました。

 

心理が30分で行ったこと(3)・・・プログラムの流れについて

心理のプログラムの直前の30分間は、「都市緑化」の講演会でした。初日のアイスブレーキングプログラムの後で、全員が集まってのプログラムです。このプログラムは、全体を通して串刺しで、最終日の「未来の夢の町」を全員で作成していくことに繋がっていきます。

でも、この企画は、地震や津波で恐い思いをしたお子さんや、故郷に戻れないお子さん、そして、放射線によって自宅の周りが大変なことになっているお子さんにとっては、うっかりすると、辛いことを思い出しかねないことなのです。

 

写真は、松本守さん(フジテレビジョン)による「都市緑化」に関する講演会です。

松本さんのお話は、さまざまな立場の人が暮らす場、とても立場の弱い人たちがいても、その人たちを包んで行く環境に思いをはせるお話でした。

また、4日間、最終日の作成に向けて、柳瀬さんが独特のパーフォーマンスで、明るく未来の理想の町を考えて行こうと呼びかけました。

講演内容そのものがどれほど素晴らしくても、どれほど、魅力的に語っても、配慮を十分に尽くしても、未来の町を考えることは、都市に絶望し、家から追い立てられたお子さんたちには、辛く、苦しい作業になるのです。

なぜなら、未来を考えることは、過去の自分を慈しんでくれた故郷を思い出すことに繋がっていきます。そして、今、このようにあることを考えます。その落差が、長い時間の経緯の中で意識化されるのであれば、普通は、ほのぼのとした温かい感覚に包まれます。

しかし、大震災の後、急激に変化してしまった故郷の記憶は、そのときに感じたさまざまな恐さ、辛さ、苦しさを思い出すことを避けて通ることができません。

課題に向き合うには、その課題を思い出さねばなりません。ですので、初日のこの段階で、自分が今このような場でいることの課題、その課題の持つ大変さを意識化させる必要があるのです。PTSDの治療では、それを避けて通ることができないのです。ただし、十分な準備ができていない初日の段階では、必要以上に辛い記憶を不用意に思い出させてはいけません。ここが難しいのです。

辛いことを思い出させる「都市緑化の話」「未来の町の制作の話」の後で、その記憶にアプローチをするのが、心理の30分の企画だったのです。

都市緑化のお話で、子どもたちは、どうなったかと言えば、お話が終わりになったときに、一挙に騒がしくなりました。

この時点で、

「ボランティア支援者の方は、後ろに下がって、テントから出てくださーい」とのインストラクションが担当者から流れたのです。

ここから当方が受けもつつもりでしたので、

「これはまずい」と思いました。

前の方にいたお子さんたち、数名が一挙にに立ちあがって、テントの中から出て行こうと歩きだしてしまいました。リーダーたちが、「まだだよー。席に戻ってー」と、高い声で呼びかけました。この声は、高く投げだす感じなので、子どもたちの緊張を高めてしまいました。会場は、ますます混乱した様子になりました。

 

なるほど・・・と思いました。

お子さんたちは、想像通り、「未来の夢の町」などの話に、不安や恐さをどこかで感じていたのです。この話は、実はテントから逃げ出したいほど、しんどかったのです。これは話の内容が面白くないわけでもなく、話し方が悪かったのでもありません。インストラクションのタイミングや、集団に声をかける声の調子が悪かったこともありますが、それだけで、多くのお子さんたちが、テントから出て良いのだと勘違いするほど、辛く感じる話だったことが明確に表れた瞬間でした。

「じゃ、僕がやります」ということで、ここで、大熊先生(くまG;写真中央)に任せました。1指示、1動作、1確認という明確な指示出しをし、一息に静かにさせます。そして、バタフライハグの導入である「グラウディング」の方法を始めました。

「皆さん、その場で立って下さい・・・いいですねー」

「目を閉じてください・・・閉じてください・・・聞こえますか?・・・雨がさっきから降り始めています」

「雨の音・・・他に何が聞こえますか?・・・黙って、いろいろな音を聞きましょう」

このようにして静かにさせた後で、グラウンディングを始めます。

大熊先生にグラウディングをお願いしたのは、この手法を大熊先生に話したところ、「これは剣道(北辰一刀流)の準備動作にあるし、剣道の方がずっと良い」ということで、この部分をお願いしていたのです。

グラウディングで、自分の重心をしっかりと真ん中に落としたところで、予定通り、早川先生(けんごんちゃん;写真右)に引き継ぎます。そこでは、呼吸法をお願いしました。元教員で、学級崩壊建て直し先生だっただけに、お子さん向けのインストラクションはお手の物です。最近では、300名の中学3年生を相手に、大アリーナで心理教育を2時間したツワモノです。

「ストローでしゃぼんだまを作るみたいに、ゆーっくりと、ひゅーっと吐きまーす」は、多分、早川先生オリジナルのインストラクションです。

落ち着いた口調で、「呼吸法」を教えました。ここまで、5分間です。(後日、野外の専門家スタッフとして参加されていた日本福祉大学の小林培男教授が早川先生に次のように声をかけていました。「テントに戻って呼吸法を行って、生理指標で自分の不安や緊張の変化を測ったら、一気に数値が下がったんですよー。凄いですねー。ちゃんとデータ取ったら良いと思いますよ」ー閑話休題)
そして、バタフライハグ、動作法と流れて行きます。バタフライハグの準備として、もともと、このグラウディングも呼吸法もあります。ですが、それぞれの技を伝える上では、一流の布陣で、都市緑化の話で生じた不安や緊張を解きながら、しかし、そこで思い出した不快に感じる記憶が消え去らないうちに、その記憶を鮮明にさせるバタフライハグを与えたのです。これがトラウマ治療の基礎・基本なのです。そに上で、後味を良くする意味も込めて、最後にとけ合い技法(動作法)で完全にリラックスさせ、仲間に支えてもらえる体験を味あわせたわけです。

このように、この心理のプログラムは、わずか30分ですが、その前の都市緑化の講演でおきた不安や緊張を最大限に利用して、効果的にお子さんに働きかけるのかを想定していました。講演で不安や緊張が起きて来ることを、全て織り込んで作られていたのです。

心理が30分で行ったこと(2)・・・バタフライハグ

初日の夜の心理の持ち時間の30分。後半は、全員参加のとけ合い技法(動作法)でした。子どもも簡単にマスターし、大人の背中に手を当て、「ピタ―・・・フワ―・・・」をしています。まったりとした穏やかな時間が過ぎて行きました。多くのお子さんや支援者には短いけれども、居心地の良い時間になったと思います。

わずか15分と短い時間にしたのは、この時刻にこれを行うと、眠く成り過ぎて、その日の振り返りを行うグループ活動の妨げになります。そこで、早々に切り上げたのです。それでも、しっかりと眠らされてしまったお子さんもいました。

しかし、ごく一部ですが、穏やかな時間とは感じていないお子さんもいたのです。それは、別の機会に触れます。そのようなお子さんが心理の専門家の対象になります。

ところで、その直前の時間は、「バタフライハグ」という方法を用いました。EMDRと呼ばれるPTSD治療専用の技法の中で用いられる手法のひとつです。この方法は、コソボ紛争のときに、戦禍を逃れて難民キャンプに逃げ込んだお子さんたちに、集団でトラウマ治療を行うために開発された方法なのです。

この技法を行うためには、EMDRを行える資格が必要です。この技法を行う資格のある臨床心理士さんは、わが国で数千人しかいません。 それを普段使いこなしている方は、千人にも満ちません。しっかりとした数日間の研修を、2回にわたって受けなければならないのです。東北はとくに少なく、 福島県で言えば、数名だと思います。今回、キャンプに参加した心理の専門家スタッフの中で、この資格のある者は、各回のキャンプどもに、7~8名いました。

手法はとても簡単なのですが、思わぬ副作用が出ることがあります。ですから、臨床心理士か精神科医師の基礎資格の上に、2回にわたる研修が必要になってきます。

これを導入するかしないかは、お子さんたちの心理的な健康さによって判断をします。深刻なPTSDの症状を抱えるお子さんがいた場合、この方法は、行わないつもりでしました。EMDRは、本来集団で行うものではないからです。お子さんたちの様子を、この時間までにじっくり眺めて判断しました。

このような技法を行うために、心理の専門家スタッフは、会場のあちこちに散りながら、お子さんたちに妙な症状が起きることがないのかについて、細心の注意を払ってもらっていました。

ここでは、「安心の風景」のイメージを持つこと、そして、心配なときに、自分に勇気を与えてくれる誰かから、声の応援メッセージをもらえるイメージを持つ「私のヒーロー・ヒロイン」の2つのことを行いました。EMDRの中では、一番安全な方法です。

それでも、筆者の言い回しの中で、お子さんのトラウマ記憶を引き出すような言葉が入らないように、事前に台詞を書きだしました。全ての台詞(プロトコルと呼びます)は、心理の仲間の専門家スタッフに事前に目を通してもらいました。

たとえば、「安心の風景」という言い回しは、本来は「安心の場所」と言います。安心の場所と言う場合、多くは故郷の我が家を思い出します。でも、この中には、故郷にすぐに帰れるとは限らないお子さんがいるのです。そこで、ここでは、「山や川などの風景や景色」という言い方にしています。地震や津波とはそれほど関連しない風景や景色ですし、「海」という言い方もしないようにしました。そして、この台詞を言い損なっているところがあれば、その場で補ってもらう約束で行ったのです。

心理の技法は、効果的であるものほど、心に影響を及ぼします。お薬も良く効くものほど、副作用があるのと同じです。また、心が回復していくときには、その途中で、強い感情が飛び出してきたりするものです。先ほど、副作用と述べましたが、個人の心理療法の場面の環境なら、不快な感情が爆発的に飛び出すようなことは、多くの場合、回復に繋がる大事な反応であることが多いのです。

でも、大勢でこれを行う場合では、本人にコントロールできないような不快な感情の爆発は、お子さん自身を不安にしますし、周囲のお子さんたちにも不安を与えます。それを避けたかったのですね。

安心感と勇気を自分で高めることが出来る方法の話は、しかし、多くのお子さんには新鮮なようでした。

食い入るようにこちらを眺め、真剣に習得したいとの気持ちが伝わってきました。しっとりとした時間が流れて行きました。

心理が30分間で行ったこと(1)・・・とけ合い技法(動作法)について

心のケアと簡単に言いますが、安心をしっかりとそのキャンプの基調に据えることが、全ての成否を決めます。心理の専門家スタッフがお子さん全員の前に現れ、表舞台に上がるのは、キャンプ初日の夜の30分だけです。

この30分のための準備は、5月の事前研修から始まりました。
事前研修の中で、とけ合い技法(動作法)は、数時間をかけてボランティアスタッフたちに対して行い、マスターをしていただきました。それだけ、とけ合い技法は重要な事前研修だったのです。

写真は、初日の午後の保護者のグループワークの中で行った動作法の様子です。保護者にも、この技法をマスターしてもらいました。事前研修に参加していなかった心理スタッフにもこの技法を習得してもらいました。これも夜の時間に向けての準備でもありました。

保護者に対してもそうですが、被災地に入る支援者に動作法を教えるのは、いくつもの理由があります。

事前研修の前にも、被災地で医療活動をしていたNPO団体、JAPAN-HEARTの医師団の医師や看護師さん80人ほどに、この技法を伝達しました。それだけ、現地の被災者には適した手法だと思ったのです。

実際、この技法は、阪神淡路を体験した経験のある臨床心理士たちも、その効果の高さと、副作用の少なさから、現地で活用している者が多いと言われています。ただ、多くは、とけ合い技法ではなく、現法の動作法を用いている場合が多いように思います。

とけ合い技法は、動作法の中でも、マスターまでの時間は少なく、応用できる範囲が広いのです。筆者は、授業中に教師が机間指導をしている間でもできることを教えていますし、キャンプ場でも、子どもに直接接するときに、横並びで立ったまま、会話を交わしながら行いました。ボランティア支援者たちは、テントの中でお子さんたちを夜に眠らせるために積極的に使いました。もちろん、支援者同士の日々の疲れを取るためにも、とけ合い法は用いられました。

 

夜の持ち時間の中では、30分の間の半分の15分をこれに使いました。支援者と保護者全員がお子さんにこれを行います。
お子さんたちが触られることへの抵抗感を減らすこと、お子さんたちにも、人に触るときに、人を安心させる触り方があることを体感してもらいました。支援者たちも、直接お子さんに触れる機会を得ること、保護者も改めてわが子を含めて、他のお子さんにも触ってもらい、このような触れ合いが、安心感や信頼感を強めるために必要なことを確認してもらいました。

 

心理の専門家スタッフは、触れたときのお子さんの反応を見ながら、緊張の高さや力の抜けなさ加減から、継続して観察していかねばならないお子さんかどうかを判断していきました。

この技法は不思議です。

 

相手に安心感を与える触り方をするには、触る側が意識的に自分の筋肉をゆるめていかねばなりません。安心感を与える側も、心が落ち着いてくるのです。安心感の相互作用という感じで、互いの安心感が高まります。そして、そのことが、お互いの信頼感を高めて行くことに繋がっていきます。いつでも、どこでもできますし、これで一度良い思いをした子どもは、「ここを触ってくれ」と要求してくることも増えます。繰り返す機会が増えれば、安心感も信頼感もどちらもどんどん高まっていくのです。

 

こんな感想がボランティア支援者たちから寄せられています。

◆リーダーさんたちは、寝る時に子どもたちを寝袋と毛布でくるんで「はい!マッサージするよ~♪ぴた~~~ふわ~~~」でアッという間に寝かしつけていたようです。子どもが寝付くと「よっしゃぁ~」とガッツポーズだったそうです(笑)

◆一度、私の担当キャビンにリーダーさんに来てもらい、瞬間的に眠らせてくださいました。本当に、ビックリしました!
帰りのバスで、「一期で鍛えられたんだよ。自信がついたんだよ」と言ったのを聞いて、すごさ・よさを改めて感じました。

◆あるお父さんは、「自分の子どもはうまくいかなかったんですー(;_;)・・・だけど、人様のお子さんから気持ち良いと言ってもらって、嬉しかったです(^・^)」と正直な感想を述べていました。

 

 

 

 

 

予想外のことを生かす・・・話(2)・・・Ⅱ期のエピソード

「みどりの夢の町の完成でーす!」の150名の大声は、Ⅱ期のフィナーレとして山々に響き渡りました。Ⅰ期の作品も見事でしたが、今回も見事な作品です。自分の未来の町を、それぞれのお子さんが作成しました。グループとしても、オブジェとしての作品を仕上げ、真ん中に置かれています。

一人では絶対にできない作品。そこで思い描くのは、未来の理想の町です。
この中には、年内には、自分の故郷には戻ることのできないお子さんたちもいます。また、今、ほとんどのお子さんが暮らす町は、放射線のために、外出が制限されています。そのようなお子さんたちは、どのような町を作りたいと願っているのでしょうか。未来を過去との関連の中で考えさせる作業は、トラウマによるPTSD予防には、重要な活動なのです。

途中で思い出すのは、たとえば、戻れない故郷のことです。あるいは、自由に遊べない町のことです。放射線のことを心配し、必死になって、対話する先生や親御さんの顔です。地震の揺れも思い出しますし、見慣れた福島第一原発が吹き飛ぶ映像だったかも知れません。懐かしい風景、平和だった震災前のことです。この作品作成は、実は繊細なワークショップであると思っています。

100名に近いお子さんです。

実を言えば、ここに作品を掲示しなかったお子さんもいました。そのようなお子さんが出てこないのが不思議なのです。心理スタッフからすれば、想定内の話ではあったのですが・・・。それ以外のスタッフには予想外だったのかも知れません。

(実は、この日、筆者は所用のためにキャンプ地を離れたので、現場にはいません。以下は伝聞で、報告を受けたものです。想像で書いているとこともあると思いますが、お許しください)

ボランティアスタッフから声がかかったのは、個人で作品を作成している段階でした。

「あのー、ちょっと気になる絵を描いているんですけどー」

心理スタッフたちは、毎朝、ミーティングを重ねています。心理の目から見て、気になるお子さんたちについて、情報をシェアしながら、関わりの工夫を話し合ってきています。すでに初日の段階から、心理スタッフの中では話題になったお子さんでした。大ぜいが活動を始めると、ひょいと、そこから離れて一人遊びになってしまいます。聴覚情報処理が苦手で、学校のような場では、結構苦労しているのだと思われました。ですが、普通の大人や教師には、このお子さんの大変さが理解してもらえないだろうなぁと思っていたお子さんでした。

ベテラン2人の心理スタッフが、背後から、熱心に描いているその絵を覗きこみました。

描かれていたのは、奇妙なオバケが、何人もいる絵だったそうです。

一人が尋ねます。「これは何の絵なのかな?」

「魔法使いのケーキ屋さん」「そうなんだぁ」「魔法使いなんだ・・・」・・しばし、絵の解説に2人が聞き入ります。

「○○ちゃんは、この絵のどこにいるの?」

「私?私いないわよ・・・こんな恐いところ」と言ってハッとした表情をしました。我に返ったのだと思います。

とっても困った顔になります。

「んー。困っちゃったかな?」・・・じゃ預かりますね・・・という目線を、もう一人の心理スタッフが送ります。
その後、絵については、本人は持って帰らないし、作品として並べることもしない、絵そのものは、恐い絵だったことに本人が気づいたので、その心理スタッフが預かり、しっかりと、責任を持って焼却することを約束したそうです。

なぜ、そうしたのでしょう。そうなったのでしょう。それは、どんな意味がこのお子さんにあったのでしょうか。ここからは筆者の想像です。
写真は、グループでの共同作品です。前の晩のカンテラパーティで、お子さんたちは、未来の町を作成し、発表しています。このお子さんにとっても、このように作品を作っていくことの意味は十分に分かっていたはずでした。

でも、いざ、個別の未来の夢の町を作ろうと思ったときに、多分、宮崎作品の魔女の宅急便の町のようなファンタジックな町にあるケーキ屋さんを想像したのかも知れません。そして、制作に取り掛かっていくうちに、自分の描く魔女が予想以上に恐いオバケになってしまったのでしょう。この恐さは、どこかでこのお子さんの中にある不安や恐さがうまく描けたということでもあったのです。言わば、このお子さんにとっての「トラウマ遊び」だったわけです。

最初の心理スタッフの言葉、「この絵のどこにいるの?」とは、その絵を客観化して見ているのかどうかの確認でした。この言葉で、自分が恐さを描くことを快適に感じていたこと、そして、自分が最初に描こうと思っていた世界とは、まったく違う世界を作ってしまったことに気づかされたわけです。

心理スタッフがここで交代したのは、それを気づかせてしまった方よりも、その困惑に付き合い、事態を収拾する人は、ここでチェンジした方が良いという共通理解が瞬時にできたのだろうと思います。

そこからは、まったくの想像ですが、本人が描いた世界、そこに現れる恐さや不安を受け止めながら、思わぬ自分がそこに飾られることは嫌なことであり、誰かにそれを迂闊には見せたくないこと、自分は家でもそれは持ちかえって、心配するご家族には見せたくはないこと、その恐さや不安は、その困惑に付き合ってくれた心理スタッフに全て預け、それをこの世から消し去ってほしいこと、などが、確認されていったのだと思います。

トラウマケアで大事なこと、子どものケアで一番大事なことは、

不快な感情を言葉にして表現させることを手伝うことです。

しかも、そのプロセスで、全ての恐さ、不安をこちらがひょいと引き受けることなのです。

心理スタッフは、このようなことを軽やかにするために、いつも、子どもたちの近くにいて、スタッフがお子さんの予想外のことに困ったときに、そのお子さんへの最適手を選択して関わっていたのです。