世界一 心が温まるキャンプを福島県でやりたいと思う

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予想外のことを生かす・・・話(1)・・・Ⅱ期のエピソード

二日目の夜のことです。ビストロパーティを堪能し、夜のグループタイム(振り返り)のひととき。
どういうわけか、あるグループだけアルバムの所在が分からず振り返りができなくなってしまいました。
このアルバムは、東急ハンズさんからの贈り物。日々の活動をお子さんが記録に残し、その日に関わった支援者がコメントを入れるものです。どのようなことをしたのかを思い出し、文字や作品を入れるのですが、このことが、キャンプの体験に意味や意義を与えます。自分の成長を、その日のうちに記録に残すことで、下山した後でも、その日のことを思い出しやすくするためのものです。
楽しい時間というものは、記憶の中ではすぐに消えてしまいます。お子さんが元の状態にもどりそうになったとき、辛い思いに襲われそうになった時には、キャンプ時の好ましい方向に戻るようにしてほしいと、関わった大人たちが願いを込める活動です。未来の自分のための贈り物の作成なのです。そして、保護者が参加していないお子さんには、保護者へのキャンプの報告の贈り物です。あちこちで撮影されたお子さんの写真も最後には挟みこまれます。そして、お子さんたちは最終日には、サインをお世話になった人たちに求めるサイン帳としても使われます。

みんな退屈そうに待ちぼうけ。今日はアルバムみつからないから明日にしよう、という流れになりました。
いよいよグループのみんなは落胆ムードに・・・。
せっかくみんな集まっているのに。女子と男子の交流が平行線のまま・・・。いまだ自然な交流が生じていませんでした。男子も4人が同じ学校、1人だけが違う学校という編成で、男性のサブグループリーダー不在という三重苦のこのグループでした。通常の教育キャンプでは、知らないメンバーで組み合わせるのですが、このキャンプでは、思い出を語り合えるように、友人同士、兄弟・姉妹同士は、同性であれば、同じグループに所属させていました。それだけに、仲間意識を知らない者まで広げて行くのは、難しい作業になるのです。
ここで解散してしまっていいものだろうか。リーダー、サブリーダーは顔を見合わせます。

 

「あのー、せっかくこうしているんだから・・」グループ付きの心理の専門家スタッフ・アラッティが提案します。
想像ですが、いつも控えめのアラッティはきっとさり気なく語りかけたのだろうと思います。
でも、内心では、「こうなったらあれしかない!」と思ったのだそうです。
アラッティは、意を決して手元のメモ帳を広げて、マジックと色鉛筆を取り出し「交互色彩分割法」変法を投げかけてみたのです(セラピストが枠を描いたあと、お互いに枠を分割する線を複数本描き、分割した空間を交互に色を塗っていく描画法です。詳しくは以下の論文をご参考くださいhttp://sir.lib.shimane-u.ac.jp/metadb/up/bull.pl?id=7202)。
一枚のメモ用紙が、グループメンバーの中をぐるぐる回っていきます。最初に一人1本ずつ線を引きます。次に、順番に好きな色を、線で囲まれた空間に、順番に塗りこんで行きます。
子どもたちは、他の子がどこに、どんな色を塗るのかを、興味深く覗きこみます。
このグループがあまりに熱心に取り組んでいるので、他のグループのお子さんが「ねーねー・・・何しているのー?」と覗きこんできました。
作戦は狙い通り大成功でした。
みんな色を塗っていく作業に夢中になり、ひとつの作品を仕上げていったのです。
これが、このグループで初めての共同作業がなされた瞬間でした。
タイトルは「宝の地~~~~~~図」と名付けられました。翌日のアルバムには作品の映った写真が貼られたのでした。
下の写真はⅠ期のグループタイム(振り返り)の様子です。普通は、個人作業ですので、書くことに困っているお子さんを支援者が手伝います。この雰囲気の中で、アラッティのいたグループは、全員が顔を寄せ合って、盛り上がっていたわけです。他のグループにとっては、「?」だったはずです。

それだけでもキャンプをした甲斐があった・・・話(2)。Ⅱ期のエピソード。

得意満面の顔を見せられなくて残念です。2人が「ドヤ顔」をしているのです。

自分たちで作ったのです。キリンのような何ともくつろげる子ども向けの椅子です。

ツリーハウスの傍らで、この2人の子がしっかり座れるものを創ってしまいました。

心理スタッフ2人がこの写真を眺めて、「どうりで。最終日に人が変わったように元気になったわけだー」

グループに付いていた心理スタッフは、「グループの中でも一番おとなしく静かだったこの2人、すごいものを作ったなと感嘆しました。多くのこどもたちが知らず知らずにこのキリン椅子にお世話になりくつろいでいました(*^_^*)」

この椅子作りを傍らで見ていたわが国屈指のキャンパーGG(大橋)さん。

「アクティビティ(activity)の仕分けが良い結果もたらした例だと言えますね、熊G(大熊)&GG(大橋)の危険に関するコンセンサスが同じだったのです。」
「さまざまな危険を除外していくのではなく、各自が自己管理していく過程が楽しいのですね、安全の杖を外す作業をあえてここでは行ったのです。」
「このブースは刃物や高所作業が多くありました。怪我も事故もなくアクティビティ(activity)は進みました。」

「遊びを創りだす子供達のパワーに大人は未来を見たような気がします。また大人は参画出来た喜びをいただきました!
共同作業に感謝!です」と語っています。

 

別の心理スタッフは、

「そうですね!最後にサインを求められた時に、違う子かと思うほど、自信に満ちていました。子どもの自助力ってすばらしいですね。」
「今回のキャンプで、小林先生やGGはじめ、みなさんが示してくださっているように、子どもが上手くいったことをたくさんシェアしあい、どのような関わりや仕組んだことが子どもの意欲を高め、成功体験に繋がったのか、支援者の関わりの良さをお互いに承認しあう「よかったねカンファレンス」をしましょう。」と提案しています。

事例検討会でもそうですが、支援者の関わりの中でどのような声掛けや関わりがよかったのかを共通確認して、その支援方法を継続していくと、支援者の絆が深まります。

その心理スタッフからは、「このようなシェアが、その後、子どもへのまなざしがより良く変化していきますよ・・・」との提案をいただきました。

何を失敗したかではなく、何が成功したのかを考えたいですね。それを積み上げることが大事なのです。

キャンプに参加したキャンパーたちのこと。

「キャンプの専門家って、凄いなぁ」と、心理の専門家スタッフがため息をついて感心していました。
「・・・子どもたち全員を一気に笑顔にさせる業がたくさんあるものねぇ・・・私には絶対できない」

なるほど・・・。

キャンパーは教師に似ています。集団を扱っていますから、似るのは当然です。でも、教師より優れていると思うところはたくさんあります(心理や医療の専門家は、集団をあまり扱いませんから、教師やキャンパーの足元に及ばないのは、言うまでもありません)。本キャンプに参加したキャンパーは、その道で名だたる人たちだと聞いています。ですので、このキャンプのキャンパーたちは優れ者なんだろうと思います。

 

第一に思ったのは、プロのキャンパーたちは、リーダーシップを教師よりも兼ね備えていると思いました。リーダーに必要なリーダーシップは主に2つあると、社会心理学では言われています。第一に、先頭に立って導くことと、第二に、辛いメンバーがいれば、そこにしっかりと寄り添い支えることです。この2つの技能が高いことが、リーダーとなりうる素養であると思います。もちろん、教師も修学旅行などの宿泊学習を行いますし、学級運営を行っていますから、この能力は高いでしょう。
でも、キャンパーは、お互いが知らない者たちを出会わせ、わずかの数日の期間に凝集性の高い集団を作り上げます。毎日が宿泊学習なのですから、それは当然、技量として高められることだろうと思います。そこで必要とされる力は、教師よりもはるかに高いと思います。

 

次に、教師より明らかに高いと思ったのは、フォロアーシップです。自分の持ち場、持ち場を弁え、その持ち場の中で、キャンプの目的を果たすために最善を尽くすこと、一度、自分の上にリーダーが定められたなら、そのリーダーの目指す方向を実現するために、必死にその役割を果たそうとする意志の強さがあると思います。集団を動かしますから、子どものキャンプといえども、自分の傘下に入る大人たち全体の士気を保ちつつ、目的の遂行に自分の持てる技量を最大限に示そうとする点です。集団の士気を下げないために、不平不満があれば、話し合いの中で妥協点を絶えず探し、総意が定まったら、それを実現していこうとするように気持ちを切り換えていく速さが素晴らしいと思いました。

第三に、完全に教師よりも優れていると思えたのは、危機管理能力です。危機管理能力とは、事故が起きないように眺める目配りし、それが発生したら、どのような手を打つのかを、絶えず考え続けていることです。医療の専門家も、心理の専門家も、それぞれの専門領域の中で、独自の危機管理能力を持ちます。今回、参加の心理の専門家スタッフは、PTSD治療の専門家たちですし、事件、事故、犯罪の後始末に組織に入ることには慣れたメンバーでした。JAPAN-HEARTのお医者さんも、薬剤師さんたちも、被災地に入ることを当然と考えている人たちばかりなので、それぞれの専門性の部分での危機管理能力は、皆、高かったであろうと思います。

でも、たとえば、シャワークライミングで、このような場に、子どもたちを導いていくには、絶対に命に関わる事故を起こさないための何重ものセイフティガードを設けていく必要があるのは言うまでもありません。

 

これらのプロに囲まれて、安全と安心を確保されながら、しかし、子どもたち自身が、「自分の力で成し遂げた」と思ってもらえるために、教えることを少なくし、手を出さず、口を出さず、指示を極力抑え、このキャンプは実現されていったのです。

 

全てが果たされたとは、考えていませんし、改善点はいくつもあります。

大事なことは、教師は、キャンパーや心理や医療の専門家が何をしているのかを、しっかりと見て学ぶこと、
キャンパーは、教師や心理や医療の専門家が何をしているのかを、しっかりと見て学ぶこと、
心理は、教師やキャンパーや医療の専門家が何をしているのかを、しっかり見て学ぶこと、
医療は、キャンパーや教師や心理の専門家が何をしているのかを、しっかりと見て学ぶこと、
その学びを、企画するメンバーは、どのようにこれらの学びを保障していくのかを、しっかり考えることができれば、次のキャンプは、絶対に今年よりよくなるに違いないと思っています。

 

 

キャンプに参加したお子さんたちのこと・・・。Ⅱ期の場合

自然、そしてキャンプは、お子さんの元気なところ、心の健康なところを引き出します。

お別れパーティの最中に、少しテントから離れて、小学生3,4年生の男のお子さんが2人、小声で話し合っています。

「もったいないよな。もったいないよ、寝るの」
「寝たくないよな・・・もっと、話、しよーよ。今夜、どうしようか」

皆が寝静まったら、ひそひそ話をしたいようです。明日の朝、こいつら起きるの大変だぞー・・・と思いながら、支援者が黙って聞いています。

大切にしたい時間だと思ってもらえたこと、ありがたいことです。

とっても健康に見えるお子さんたち・・・でも・・・。

 

保護者の事前アンケートでは、次のような話が保護者から寄せられていました。

最終的にこのアンケートにお答えいただいたお子さんは、74名でした。回答者は、福島県内で被災されたお子さんばかりでした。

◆生活上の変化では、このような変化を味わっているお子さんたちでした。

「日常生活で、放射線で外出の制限のある」お子さん・・・68名。
福島市や郡山市を始め、中通りのほとんどのお子さんは放射線のために、遊べない生活が続いています。
「避難所での生活を体験した」お子さん・・・12名。
「転居や転校の体験」をしたお子さん・・・8名。
住居に変化がなくても、水道が使えない生活を数週間味わったお子さんもいました。

◆災害をきっかけに、加わってきたストレスの中で、多かったものは次の通りです。

「地震・津波などで恐い思いをした」お子さんは、59名でしたが、この中に、放射線を恐がっているお子さんもいました。
親しい者との別離で、自分が転居していなくても、「親しい仲間との別れを体験した」お子さんが26名いました。
この中で、数名は親しい人との死別を経験しています。

◆お子さんが示すストレスによる反応は、災害後に次のような変化が見られていたようです。

「恐がりになった」16名
「睡眠の変化」9名
「身体の不調」9名
「おとなしくなった・言うこと聞くようになった」3名

「怒りっぽくなった・反抗的になった」12名
「活発になった」6名
「勉強しなくなった」6名

 

ストレスで生じる心の反応とは、大きくは上記のようなものなのです。もともとに比べてどうなのか・・・を見て、分かることばかりです。こられは、ごく普通のことに見えることなのです。目の前に表れるお子さんがもともとこのようなお子さんなのだと思っていると、そのお子さんの大変さは分からないのです。

心のケアのキャンプで大事なことは、恐さや怒りや悲しみや寂しさなどの不快な感情を、しっかりと表現し、それを誰かに受け止めてもらえることです。
キャンプの遊びの多くは、恐さをスリルに変えることで成りたちます。
また、何かを創り上げるのに必要なことは、怒りのエネルギーです。怒りは、新しい物を創るエネルギーに変換させやすいのです。なぜなら、怒りの背後には、「この状況を変えろ」という要求が生みだすものだからです。そして、怒りを意味ある体験に変えて行くことは、「自分にもできることがある」との体験を与え、無力感を克服していくことに繋がります。

 

「恐がりになった」お子さんを、恐さを少しだけでも楽しめるようにすること、活発なお子さんのエネルギーを少しだけ、創造的な活動に導くこと、それが、このキャンプが目指していることなのです。先々のPTSDを未然に防いでいくには、このようなことが、今、必要なのだと思います。

単純に、自然の中にお子さんを連れて行き、活動させて、ストレスを発散させるなどというのではないのです。

そのためには、一人ひとりのお子さんの状態に応じて、不快な感情を受け止めつつ、行動面の許容と制限を適度に調節する必要があります。それを、どの程度行うのかが適当なのかを、お子さんの様子一人ひとりを見ながら、心理スタッフは見極めます。そして、丁度良いところで関わるように、キャンパーの背後で、心理スタッフが囁きます。その囁きは、その辺りの匙加減なのです。

それだけでもキャンプをした甲斐があった・・・話。Ⅱ期のエピソード。

発達障害と診断されていた恐がり屋さんが、大声を上げながら、ツリークライミング企画のターザンロープを喜んでいたそうです。ロープの長さは15メートル。地面を通過するときの速度は尋常ではありません。
支援者の一人は、「そのことだけでも、このキャンプをした甲斐があった」と最終日に語っていました。
「そのことだけでも・・・」という話は、実は、他にもたくさんあります。

もう一つのお話。

ついさっきまで、元気に遊んでいたあるお子さん。初日のとけ合い技法の中で、触ったときに、腕の力が抜けないお子さんだったので、気になっていたお子さんでした。お昼の食事でリラックスしてもらっている中で、動作法の名手が背中を触っていたら、神妙な顔に・・・。
「あれ?痛いのかな?」と尋ねたら、首を軽く振って、横から、心理スタッフが、「淋しいんだよねー」と言ったとたんに、今にも泣きそうな顔に。

正面に回って、「さみしいんかぁ・・・」と言った途端に、大粒の涙を流し始めました。「さみしいんだよねー」と、声をかけると、「ううう・・・」と声を挙げて泣き始めます。小一時間、動作法の名手に任せていましたが、別件で席を離れたので、しばし、小林が背中に回りました。

「グループメンバーが自分より年上ばかりだから、無理したんでは?」とキャンパー。でも、仲間の子どもたちは、自分たちが悪いことをしてしまったかと心配する位心優しい子たち。多分、そんなことではないと想像しました。

このようなことをお得意な心理スタッフに目配せをし、任せました。そっと連れ出して、ゆったりと散歩をします。すると、「ぼく、帰る」と言いだします。「そっか、帰りたいか」と上の駐車場に行ったところで、荷物を忘れたと気づいて戻ってきました。寝具を畳んで、自分の寝ていたところを綺麗にし、荷物を、心理支援者とそろえます。帰り仕度が整ったところで、改めて

「いっつも、さみしいのかなぁ?」・・お子さん頷く・・「さみしくないことや、さみしくない人っていないかなぁ」

「姉ちゃんとだと・・・」・・「お姉ちゃん、どこにいるの?」・・・「キャンプに来ている」・・「え?じゃぁ、お姉ちゃんと同じグループで活動するというので、どうだ?」・・・

お子さん黙って、荷物を下ろし、布団を綺麗に敷き直しました。心理スタッフと一緒にディレクターに相談に行き、その後は、キャンプを思い切り楽しんでいきました。

「帰る」と言うんですよね。それを言って大丈夫な人には、甘えてみるのです。「ダメで情ない僕でも、大切にして!」ということだったんだろうと思います。1時間以上お付き合いした、そのスタッフには、その日、まったく近寄らなかったそうです。

でも、お別れパーティのときに、そっと「ありがとう」と、にっこり笑って語ったとの話でした。
お忙しいご家庭の中で、留守番が多いお子さんのようです。帰っても、実は、誰も家にはいなかったのだそうです。
寂しさを埋めるのには、こんな関わりを大人に求めるものなのですね。

心理スタッフと過ごした1時間は、このキャンプでないと過ごせなかったはずで、一生の思い出となったと思います。